iPhone の海外製アプリを翻訳する機会に恵まれて

2013-11-29-001

アプリ開発者でも何でもない自分が、1本のアプリのリリースにこれほど胸躍る気持ちになれるなんて、夢のようです。本日、Boxie という iPhone の Dropbox 管理アプリの日本語対応バージョンがリリースされました。私はボランティアとして、この翻訳作業を担当する機会に恵まれました。特に英語が堪能なわけでもない自分に、まさかイタリアのアプリ開発者と一緒に仕事をする日が訪れるとは思ってもみませんでした。

目次

  1. きっかけ
  2. 声がかかる
  3. 受けた理由
  4. ボリューム
  5. 翻訳時に心がけたこと
  6. ベータテスト
  7. 一連の経緯を振り返って

きっかけ

Boxie は10月にリリースされたばかりのアプリで、イタリア・ローマに拠点を置くアプリ開発者 Matteo Lallone と、デザイナー Gianluca Divisi の2人が開発しています。

自分はリリースから間もない時期に Boxie を購入し、使い始めたばかりの頃にバグを見つけ、Boxie の公式 Twitter アカウントに英語で1本のメンションを送りました。それがすべての始まりです。

リプライには「メールで詳しく教えてほしい」。英語の文章を読むことはあっても、普段から会話はおろか英文を書く機会さえない自分にとって、決して低くはないハードルでしたが、辞書を頼りに淡々とバグの内容を綴ってメールを送りました。

声がかかる

そのメールに対する返信には、バグを修正するとの言葉に続けて、驚くようなことが書き添えられていました。「Boxie を日本語化したいので、翻訳とベータテストを手伝ってくれないか—。」

その直前に、翻訳プロジェクトへの協力者を募る公式アカウントのツイートを目にしていたので、プロジェクトの存在自体は承知していました。ですが、若干の興味は感じたものの、とても自分にできるレベルではないと思ったのでツイートは流し読みするだけで、自分ごととはとらえていなかったのです。

それが逆に声をかけられる形となり、うれしさもありましたが正直戸惑いの方がはるかに大きかったです。

受けた理由

本当に自分にできるのだろうかと悩みもしたのですが、結局、話を受けることにしました。

それは、プロジェクトへの協力者を募るツイートを最初に目にした時、自分自身が興味を覚えたという事実を大切にしようと思ったからです。また、開発者側から声をかけてくれる機会なんてこの先きっとないだろう、と考えたことも理由にあります。

ありていに言えば、「これも何かの縁だ」と自然体で構えることにしたのです。英語の勉強になるし、不安はこれからの勉強で乗り越えればいい、と前向きに考えることにしました。もちろん、Boxie というアプリのこれからに大きな期待を感じ始めていたことも理由の1つです。

ボリューム

引き受ける旨を伝えて間もなく、翻訳する対象のファイルが複数示されました。ファイル自体がいくつもあることも驚きでしたが、特にショックを受けたのはそのボリューム。メインのファイルをテキストエディタで開くと、数百のフレーズが記載されており、行数は1000行近くありました。

あちゃー、と思ったのですが引き受けたものは仕方ありません。ファイルだけではそのフレーズが実際にどの場面で使われるのかも確定できないので、必死に Boxie を操作し、ファイル内の用語とアプリの画面とを突き合わせ、1つずつ翻訳していきました。

作業期間は3週間弱。他の国と比べて日本はスタートが少し遅かったこともあり、寝る間を惜しんでの作業でした。

翻訳時に心がけたこと

翻訳に当たっては、基本的にこちらの裁量で作業をさせてもらえたので、とにかく日本のユーザにとって分かりやすい日本語になるよう、自分なりに努めました。

そのために、iPhone の標準アプリ、Dropbox の公式アプリと Web バージョンなどを参考に、なるべく操作時に違和感を覚えることのない用語、iPhone や Dropbox を使う中で普段から目にしている用語に訳すようにしました。

また、日本のユーザにとって一般的ではなさそうな単語については、あえて直訳はせず、別の単語に置き換えた上で翻訳する、といった視点も取り入れました。

ベータテスト

一通り翻訳が終わった後で、ベータテストに入りました。ベータテストとは、簡単に言えば正式リリース前の開発中のバージョンを実機にインストールして動作確認することです。

日本語化するためのファイルが反映されたベータ版の Boxie をインストール、そして起動した瞬間—。

iPhone の画面に、見覚えのある日本語が並びました。自分がファイルに書き込んだ日本語の言葉が、アプリの画面にそのまま表示されている。その時の興奮や心の底からこみ上げてくるうれしさは、今でも忘れられません。

ただし、興奮の後には焦りがやってきます。英語と日本語とで文字の表示サイズが若干異なることもあって、所定のスペースにうまく収まっていない日本語がいくつか見つかったためです。

デッドラインも近づいており、最後は時間に追われるように動作確認と語句のチェック。そして新たに追加されたファイルを翻訳。そんな風にして、自分のほろ苦い翻訳デビューは慌ただしく幕を閉じました。

一連の経緯を振り返って

一連の作業が終わった今、ゆっくりと振り返ってみると、やはり自分の英語力の拙さというか、学生時代にもっとしっかりと英会話を学んでおけばよかったな、と思う気持ちが強いです。

開発者の1人、Matteo とプロジェクトを通じて何度もメールを交わしましたが、最初の頃は1通メールを書くだけでも相当の時間がかかりました。ただ、やりとりを続けるうちに少しずつ書くスピードは早くなっていき、また Matteo のメールの文面から自分が知らなかった熟語の使い方など、生きた英語表現をたくさん学ぶことができました。”Cheers” のスペルも覚えました。

その意味では、英語力に関して言えば、難しいチャレンジではありましたがやった分だけの効果はあったのかな、と思います。

そして何より、iPhone アプリという自分が大好きなものの開発に、ほんの少しだけれど関わることができたのは、何物にも代えがたい貴重な経験になりました。

人生には何が起きるか分からない。生きてさえいればきっと面白い出来事にめぐりあえる。翻訳を終えた今、つくづくそう実感します。

Boxie は無料アプリとなっていますので、ぜひ試しに使ってみていただけたらうれしいです。詳しい説明は次の記事に書いています。

最後に、このプロジェクトの話は今回ブログに書くまで誰にも話していませんでしたが、英語の勉強を始めたこと自体は、ブログに書いたり SNS に投稿したりしていました。

そうした記述に目を留めて励ましてくださった方、てっとり早い英語の勉強の仕方がないか相談させてもらった方、また iPhone の英和・和英辞書アプリを探すのに付き合ってくださった方。そうした方々に実は支えられて、翻訳を無事に終えることができました。

この場を借りて、お礼申し上げます。ありがとうございました。

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